美しき涙

先日、イラクで人質となった3人のために何かせねば、という水野スウさんの呼びかけで、中央公園前にてピーススタンディングを行った。そしてその際、自衛隊イラクに居続けることに対する意見投票を町行く人々にしていただいた。
 何も言わず通り過ぎる人、真剣に投票してくれる人、ためらいながら、あるいは祈るような表情でそれぞれに投票に対しリアクションしてくださった。
 ある60代の男性が、自転車を止め、いらだったように僕たちに向かい「そんなもん反対すればかっこいいとおもとるやろ、世界の孤児になってもいいんか、最前線行ってみい!お前らみたいなへなちょこに何できる!」と言い放った。そのとおりである。僕たちの願いは国際社会の秩序に対してわがままで、情に浸りすぎているのかもしれない。けれど、その情を亡くして生きる意味がどこにあるのかと僕は言いたい。確かにいろいろな意見があってもいいと思う。それは愛すべき多様性として。しかし、誰かの命を軽視することは自分自身の命、強いては王道としての共に生きるという秩序を軽視することになると思う。彼が去った後、僕の隣で意見投票を求める女性の目から一筋の涙がこぼれた。僕はこれほど美しい涙をこれまでの人生でかつて見たことがなかった。
 彼女の願いが一日でも速く実現することを心より祈る。