熊野作太郎命日

 僕の父方の祖父、作太郎は46年前の今日、他界した。昭和33年2月26日に。もちろん一度も会ったことはない。僕の生まれる以前に帰らぬ人となったからだ。けれど、不思議なことに僕にとって作太郎はとても身近な人物の一人だ。親戚のおじちゃんやおばちゃん、父親から聞いた作太郎像、笠智衆似で、穏やかな物腰。
 そして作太郎作の輪島塗のおわんの数々が今も静かに語りかけてくれる。
お正月に雑煮を乗せて。作品が残るということは不思議この上ない。作品が生み出された瞬間には一体どれだけの寿命を持ってきたかは誰も知らない。作者よりも生き続けるもの、時代を超えて生き残るもの。いろいろあるが、長くあるものはただそれだけで意味深いような気がする。続けることからすべて生まれるような気がする夜。果たして自分は一体何を生み出しうるのか、自己嫌悪と弾けたい内面のハザマで・・・おじいさま、おやすみなさい。