本日一番のお客様

 時としてその日、来られるお客様が分かるときがある。本日一番初めに来られたお客様も予感どおり、きっちりといらしてくれた。38,9歳まではどん底。そこから大いに這い上がられた人生を歩んだ彼は今78歳。最高潮のころは腹巻にいつも100万円、財布には10万円を持ち歩き、さっさと使っていたという。けれど、それが幸せというものだったのか・・・と首を傾げていた。
1日のうち3分の2は寝ているという。そして、これほどの人生を歩ませていただいたのだから、感謝の心境に落ち着くように日々努力しているといわれる。それでも、老体は老体なりの欲があり、最後まで自分の道を究めたいといわれる。話の途中でBGM を替え、日替わりの準備もストップした。ここに来ていつものジュースを飲むとちょっとだけ元気が出るんや。そうおっしゃってストローを銜える姿に、なんともいえない気持ちがこみ上げてきた。
 大変華やかな人生を歩んでこられた方だけれど、現実にはたくさんの悩み、心配事を抱えておられる。差し引きしてゼロ、そんな風に受け取りそうになったけれど、人、一人の人生はもっと重いように感じられる。重量ではないが、味のようなもの。喫茶店主は、飲み物、食べ物を提供させていただくが、お客様より深い味わいをいただいている。
ありがとうございます。