10年目

 メロメロポッチを創業し、初めて息をついたのが5年たった時だった。1年、3年と、いわゆる節目を経てきたが、やっぱり5年が最初の区切りだったように思われる。そして、10年目である今年。常々、10年という月日の重みを感じてしまう。まったく同じように店を開き、冗談を言ったり、驚いたり、慌ててみたりしているのだけれど、心の中ではいつも、あ〜これが10年目ってことなんだ、としみじみ思う。連日のアーケード工事も迫り来る5階建てビル完成の日も、僕にとってはあまり意味はない。そんなものには負けない、いや、動じない確固としたものを、かわいがっていただいたお客様より戴いた。根拠はない。もちろん、お金もない。しかし、最高にわくわくしたあの、メロメロポッチオープン前夜の緊張感が再度、僕の胸を襲っている。22日に結婚された福井のS先輩の披露宴の席で、彼の柔道の師匠が話された、壁にぶち当たり混乱したときには、なぜ自分がそれを今しているのかという根本原因である初心に帰れというありがたい言葉ではないが、10年という歳月がしっかりと僕を支え、勇気を与えてくれる。
 店内では、壁いっぱいの写真。「日々メロ展」みねちゃんが捉えてくれた奇跡の数々・・・ますます僕の気持ちをその気にしてくれる。「若いですね。オープンしたころの熊野さんとあっこちゃん・・・」当時まだこの店を知らない常連のお客様が感想を述べてくださった。不思議な気持ちになる。あふれんばかりの壁中の写真からの愛。目に見えない感動の詰まった歳月を経た空間からの愛。そして、さりげないひとことから垣間見えるこの店に対する愛。
 ただただ嬉しく、心でしみじみとそれらを味わう。寿司でも刺身でもないないのに、この瞬間しか味わえないもの。
 10年目の愛というものを。
ありがとうございます。皆様。