一番大切なこと

 昨年10月の演劇「武蔵戦隊近江レンジャー」の経験は、僕の人生観を大きく揺さぶった。その結果、一番大切なこととして僕の意識に大きく浮かび上がってきたことは、「解雇しない」ということだった。演劇の世界なので、雇用の世界のことば、「解雇」を使うことはふさわしくないかもしれない。しかし、非合理的なメンバーを排除し、そこから生まれるものの結果は所詮、予測しうる「まあまあ」な線でしかない。今日の夜のメロポチのカウンターでの会話ではないが、予測し得ない奇跡の連続でしか感動は生まれないのだ。僕はまったく違う感動の世界を垣間見てしまった。脚本からあふれ落ち、零れ落ち、演出家でさえどちらへ転ぶのか予測不可能な状況。そこからしか、リアルな感動は生まれてこない。それを見てしまった。そして、それこそが生きる意味なのではないかとさえ思ってしまった。
 今の日本の状況は、格差社会、そして大企業の空前の利益率。会社を存続させるために、多くの社員を切り捨てた結果だ。どんどん機械化、オートメーション化が進み、無人化が進む中、どこに人は働けばよいのか。金は稼げど、殺伐とした事件はどんどん降り積もる。会社を営み、雇用を求める立場の人は、いざとなったら自分の首から切るという気概が必要ではないか。そんな気概が、あるいは愛がこの世にあふれていれば、どんな状況になっても何の問題もない。そんなことを思った夜。
ひとり。果たして・・・