溶けてゆく夕暮れ時

 週末からの怒涛の日々の影響か、なんとなくぼんやりとした一日だった。それでも朝一のお買い物から石川さんのライブまで一応きっちりとこなしたつもりだ。しかし、夕暮れ時、うかつにも二人のお客様をよそに、溶けていってしまった。カウンターにて。はじめて出会う二人の男女。本来僕もその会話に加わっていたはずなのに・・・気づけばBGMのハセケンも僕と同じく沈黙の彼方へ。僕が目覚めると二人とも静かにそっと佇んでいた。まるで何もなかったかのごとく。
 あぁ、そのあと二人がどんな会話をして如何に静寂へと収束していったのか知るすべもないが、なんともいえない素敵な時間が流れたことは、空気に漂う余韻によって十分推し量ることができた。
 「ほんとにやる気ないっすね。」彼がそう僕にひとこと。あきれた店主に対する愛情のこもったひとこと。それだけで十分。僕は幸せ。これから二人にどんな物語が展開しようとも。な〜んて!

 ごめんね!寝ちゃって。