10年間の重み

 だんだんと物事に慣れてくると、最初はつらいことも次第に軽くなってくる。軽くできるようになる。いわゆる熟練という域。つまり、どんなにつらいことも続けることによって簡単にできるようになる。すなはち、それをどれだけするかということ。メロメロポッチという仕事も11年目に入り、軽くいろいろなことができるようになった。けれど、10年間という時の重みは、面白いようにその色合いを深く重厚に僕に見せてくれる。僕は日々感嘆している。この世界の美しさ、この世界に生きる人々の美しさに。なんと軽やかに美しく生きる人々!!彼らがふと立ち寄ってくれるこの店。それだけで十分なのだ。それだけで。ここ最近、メロメロポッチはまるで川のようだと思っている。そしてお客様は鮭。帰ってきてくれるのだ。生き生きと。飲食店を繁盛させるための読み物が、よく投函される。しかしどれも真髄をついてはいない。店は商売であって商売ではない。人間の時間はそんな軽いものではない。数字という一目瞭然のまな板には乗り切らない。だから人は酒を飲み、語り合い、沈黙の中、音楽に沈み、何もかも忘れ踊り狂う。割り切れないから涙し、血の熱さゆえ笑いあうのだ。明日もあさっても僕は僕のダサさを貫く。10年間の味わいを胸に感じながら。ありがとうございます。皆様。おやすみなさい。