勝ち抜いた男

 ここ最近の日中の暇さは目に余るものがある。あまりに暇すぎていわゆる暇疲れ状態が続いていた。しかし、今日は朝から「熊野君?今から君に用事がある。」そんな電話に象徴される貴重な出会いの一日だった。
 昼下がり、カウンターの端に常連の男性が一人残ったその瞬間に彼は入ってきた。元税務署長を会社の経理の税務士として迎えた数年後、社員40名の自分の経営する会社をその税理士によって計画倒産されてしまった元社長。
しかし、5年がかりの裁判で見事に勝訴し、会社と自己の名誉を守った男。(けれど、会社は既に倒産し無くなってはいるが・・・)66歳とは思えぬ若さと情熱を感じた。いろいろな人生の妙味、そして社会のからくりの話をじっくりと聞かせて戴いた。しがらみで物言えぬ人々、何のために生きているかを見失った人々、責任を与えられぬがゆえに膨らみ続けるこの国の借金・・・
 話を聞いているうちに、自分はまだまだ自分に甘いなあとの思いが胸に湧き上がってきた。映画にでもしなければならないくらいのドラマティックな倒産後の人生。それを乗り越えた人しか感じさせ得ない清々しさ。
 ここ数日もいろいろなことがあり書き留めねば、そう思って何度か日記を打とうとしたが、全て挫折した。今夜は絶対に挫折するわけには行かない。そう強く思った夜。
 ありがとうございました。勇気と希望を戴きました。