メロメロポッチ

 1998年7月4日、メロメロポッチがこの世に産声を上げた。僕の人生の中で忘れることができない日。期待と不安、今でもこの日の気持ちははっきりと思い出す。けれど、そんなことをのんびりと考える暇はなかった。以来、数え切れない人と出会い、笑い、泣き、感じ、震え、飲んで、歌い、踊り、騒ぎ、語り明かした。
 世界で3本の指に入る幸せ男、それが自分自身の代名詞だった。今でもその気持ちは変わらない。マスターとして仕事をしてきたわけだが、いよいよその座を譲る日が来た。ル・高野男氏に。
 最近の自分はいやらしいほどに、ルさんに物言いしていた。細かいことを山ほど言ったが、本当に言いたかったことは、このメロメロポッチという店を愛してほしいということだけだった。メロメロポッチはいい加減で、汚らしく、貧乏くさく、はっきり言って最低の店だと思う。ではなぜ、今日まで続いてきたのか?それは、日々来店してくださる、あるいは遠くの地から思いを寄せてくださるお客様があつくあつくこの店を愛してくださるからだ。
 何ができなくてもいい、お客様の愛情をこえる愛でぶつかってほしい。生きるリアリティー、メロメロポッチで生きるというリアリティーをつかむために。