この余白・・・

 深夜3時過ぎ、携帯の電話が鳴った。某男性のお客様より。
「もうだめや・・・」

ときどき、このような電話をいただく。寝ぼけてはいるが、ぼんやりと正面から話を聞く。直感から伝わるのは、あっ、別の人が入っているな、ということ。そして、生きていくこと、生きていることに対し、誰かに「イエス」と言って欲しいと思っていること。

人は傷つきやすく、移ろいやすい。彼が誰かに傷つけられ苦しんでいるように、僕も誰かをきっと傷つけて苦しめて生きているのだろう。人間のバランスは、一部の自然のバランス。妙のうえに成り立ち、壊れやすく、脆い。瞬間、絶妙の美を見せれば、瞬間、泥沼の悲しみの海が広がる。

深夜の静けさ、この余白に永遠を感じれば、深い闇夜に「この世は苦・・」という呻きがこだまする。天国と地獄はまったく別の世界にあるのではなく、寸分違わぬこの瞬間に同じ場所に存在する。天国もまた味わい深く、地獄もまた深き妙なる世界ではないか。

彼の電話に、世は思索の世界となる。