嬉しい昼下がり。懐かしい逆上がり。

 昼下がりに、初めてご来店されたサラリーマン風の男性がカウンターに座り、カレーを注文された。実は、初めて来られたお客様がカウンターに着席されるときほど、僕はドキドキすることはない。粗、粗相があってはいけない!と心の中で繰り返す。おろおろしながら準備をするも、お客様はなぜかにこやかにしておられる。そして、何を思ったか、「哲学ライブハウス喫茶へようこそ〜!」なんて、9年目にして初めて口から出たせりふを言ってみる。
 ぼそっと彼が呟いた。「なんだか、得した気分・・・」
こんなときほど、「やった〜!!!」と思うことはない。先日は、やはり初めて訪れたハイソな奥様に、突然笑われ、「どうされましたか?」とたずねると、「汚い店だな〜と思って・・」というお言葉をいただいた。なんだか、心が温まった。そして、掃除せねばと心に誓う。
 やはり、一言一言のキャッチボールがカウンターの醍醐味だ。初めて店に立ったあの日から、気持ちは今も変わらない。このドキドキ感は、初めてできた逆上がりの感じにも似ている。人生の栄養素を一つ一ついただきながら、また、この店に立つ。