時間衣装

 いちばん外側に僕たちがまとっている目に見えない衣。それが時間衣装。挨拶をしてもしなくても、握手をしてもしなくても、互いに類似した時間衣装であることが、滞りのないコミュニケーションの基本である。互いにかけ離れた時間衣装を纏っている場合は、どちらかがその衣装を脱ぐか、さらに纏う必要がある。けれど、自然とその衣装が類似してくる別の方法がある。 お茶を飲むのだ。何も言わず。「ぷはー」と大きく息を吐く以外は。
 先日、あるお客様からメールを頂いた。文学的センスあふれるメール。うれしさもさることながら、返事が書けない。これは一生書けないかも知れない。メールは返信されるまでの時間的間隔にこそ深い意味があると思っていたが、返信できないとは如何なものかと自問自答するも、笑うしかない。この場合、僕たちの時間衣装は?などと考えてみても、やはりそれはただの逃避行動でしかない。果報は寝て待つしかなさそうだ。やっぱり今夜も返信できない。時間的間隔はますます深くなる。