魂を信じない女性

 今夜のライブは92回目のSU-PERCUSSIONこと、小幡 亨氏のマンスリーライブ。このライブを観ずして、メロメロポッチを語ることはもぐりであり、このライブを観ずしてメロメロポッチに満足するものは「仁和寺の法師」である。この夜、僕は不思議な体験をした。8時15分ほどから始まり、9時30分までの演奏の<時間><空間>、そして僕の<人間>は、人生の修練とも言える異時空間へと導かれた。
 まずは、ライブとはまったく関係ない煩悩の世界。そこで僕はある人に謝り続けている。心、乱れながら。次に市場内の遠くで穴を掘る工事の音に、動揺する。せっかくのライブなのに・・・言いに行くべきか否かと。しかし、いつの頃からか、工事の音が鳴っているのか、どうなのか、まったく気にならなくなる。どうでもよいという感覚でもないのに。
 そして、小幡さんが叩くスチールドラムに何故か「和」を強く感じる。しばらくすると、頭に寝不足のわっかが乗っかっていることに気づく。しかし、昨夜は寝すぎというくらい寝て、決して睡眠不足であるはずはない。よく、頭に意識を集中すると、まるで、頭は眠っているような感覚しかない。けれど、意識は凛々と周囲を見渡している。この「意識」と感じるものが、何か別物に思えて仕方がない。そうこうしているうちに、いよいよその意識もどこか遠いところへ溶けていくようになる。果たせなかった約束も、自分自身も、こだわっていた譲れないあのことも、次第に薄れ、どうでもよくなる。目を閉じ、時間、空間、人間の3つのスペースがなくなって「無間」地獄のような始まりと考えていたこのライブが無限に広がり、そして、気持ちよく、まるでゆっくりとしかも穏やかに無に帰するような感じで。

 先日、読んだ瞑想の大家J.クリシュナムルティの世界観、いや宇宙観がそっくりそのまま具現化したような気がした。無限と無が共存したような不思議な・・・

 すると、ライブ終了後とあるお客様が「私は魂をまったく信じてなかったけど、今夜、魂があると思った。」との感想を。心なしか、今夜の彼女は輝いて見えた。

僕が感じていた意識とは違う何かも魂というものだったのか・・・