またしても京都・・・

 このところとにかく、京都だ。茶木みやこさんの最高のライブ。とんでもなく美しいオーラを放つ美大卒業生のお客様。もちろん京都生まれ京都育ち。そして、あさってやって来られる平成の人間国宝、長谷川健一氏。鴨川の上流に計画されたダムは当然のことながら僧侶、市民が一体となって反対。そして却下。歴史と文化。その言葉が今を生きる人々からもあふれ出ている。
 何日か前に、朝日新聞に出ていたイヌイットの人々の45年前と今の暮らしの違いについて何人かのお客様と話し合った。僕は、かつてマイナス20度の世界がわずか半世紀で気温5度、Tシャツで無邪気に遊ぶ子供たちの姿を写す写真に絶句した。そして、僕らに必要なことは明日にでも死んでしまうかもしれない現実を受け止める心の準備ではないか、そう思った。
 驚くべきことはよくあるこの店で、その日の夕方、ダライラマ14世が唱える死の恐怖を克服するマントラのCDが某お客様よりプレゼントされた。クリスタルボールのように空間全体を反響させる倍音の深い声。日々1回はかけることとなり、今夜の小幡さんのライブ終了後にも店内に響き渡った。108回目を数えた小幡さんのライブは外の工事音や、騒音もやさしく包み込むようにしっとりと解き放たれた。これでまともになれる・・・小幡さんの囁きが妙に耳に残った。
 肩に腰掛けた声もぬぐいもせずに連れて行こう

このワンフレーズが最近の僕のハセケンのピックアップキーワードだ。なんとも意味深くため息しか出てこない。京都で生まれ京都で育つ・・・そんな彼のあの声がまたやってくる。3650日を数えるメロメロポッチに。捉えようとしても捉えつくすことのできない長谷川等伯のあの国宝を歌にしたような世界観。あさってまでの時間が長い。