拝啓 背景さま

 背景によって、見えるものそのものの見え方は異なってくる。相対的に変化する。人もまた、それまでのバックボーンすなわち背景によって印象が変わってくる。しかし本来、その人そのものの中に、彼あるいは彼女の背景は凝縮されている。バックボーンを聞いて印象が変わったように感じるのは、まさに自分自身の先入観をそこに差し込んだことでしかない。どれだけイマジネーションを膨らませてみても届かない世界が必ずある。似たように朝起きて、ご飯を食べて、いろいろあって眠る。ただ単純にその繰り返しでしかなくとも。しかし、想像力でたどり着けないからこそ、人間関係の面白さやほろ苦さがそこから生まれるのではないか。
 当然のことながら、味わいは皿の上だけのものではない。最後に残る味わいは、人間と人間の関係から生まれるものではないのか。
 僕らが人間である以上は。              軽口