死にたい夜

 1月31日の夜。そう、平成の人間国宝「長谷川健一」ライブ。すごいミュージシャンはリハーサルからしてすごい。僕が今、今一番はまっている曲をきっちりと演奏してくれる。しかも、その歌に僕が極めてはまっているということを一言も告げなくともである。このリハーサル1曲で今夜のすべてが決まったのだ。寿司を食べているとき、特に旨い寿司を食べている最中よく僕は死にたくなる。この幸せな瞬間すべてが終わっても、むしろ幸せ。という具合に。そして、このリハーサルからライブ終了まで、あまりにもの恍惚感に襲われてしまった。HEATWAVEの山口 洋兄貴の金沢市民芸術村「歌の宅配便ライブ」の「新しい風」の伴奏で脳みそが溶けた興奮とは違う、ハセケンの言葉を借りれば「凍る炎」に触れているような熱く冷めた異様な興奮状態。
 メロポチが入る雑居ビルの取り壊しの話に際して僕が割りと冷静に対応できたのは、いつも店でヘビーローテーションでかけているあのライブ版を録音できたからに他ならない。あの夜の空気感がメロポチ10年間すべての夜のそして昼の結晶なのだ。あの夜は、必死だった。あまりにも幸せだったが、死にたいなどと考える余裕はなかった。そして、記録として残してしまった今、さらに訪れて奏でてくれる彼の世界に僕は堕ちた。
 メールの予約で「人間国宝ライブ予約」という件名を見た。嬉しかった。僕と同じ気持ちなのだろう。冗談で言っているのではない。彼が音楽で表現する世界はこの国の文化の柱として、千年、二千年と続いていく。
 同じ時代に生きる喜び、そして彼の歌に触れることができた幸せに感謝して。ありがとう皆様。そして、ハセケン