歴史と瞬間

 先日、東京へ、とある演劇の公演を観に行った。とりとめてどうということのない登場人物のキャラ。ありふれたテーマ。ありふれたタイトル。どこをとっても、観る人にプレッシャーを与えない内容。けれど、それらの入り口のゲートの低さとは裏腹に、この国の演劇界の頂点を瞬間的にめざすパッションを感じた。そして、意外にもこの瞬間、この時代に書く脚本家のもがきの中に永遠を内包した「瞑想」的なものを感じた。
 僕は演劇の脚本を書く際、頭の片隅に「歴史」をいつも意識していた。それは歴史的なものということではなく、歴史に耐えうるか、という点において。けれど、今回触れた「瞑想」的なるものを与えてくれたこの作品との出会いによって、僕は、まったく新しい観点から切り込むこととなる。そして、その答えは11月の三日間で出すことになる。